


お店を続け、お店が育つ過程を見つめるうちに、それは「一本の木が育っていくイメージと重なる。」と、自分の中では思うようになってきました。
山や海、植物や動物に囲まれた暮らしをする以外にも、たとえ都市に住んでいたとしても、「生命」を感じながら、身の回りの環境と調和した生き方があるんではないか?
写真家で日本文化研究者のエバレット・ブラウンは「ローカリティ」という言葉について、“すべてのものがつながっているという感覚…ローカリティというのは、その人が持っているひとつの宇宙のことです。その中で生きてる人は季節の移ろいを感じながら成長していく。毎年の経験を重ねていくうちに、あらゆる物のつながりがわかってきます。ローカリティを持つ人は、その小宇宙の混乱(パズル)を解決していきます。”と触れます。『日本力』(松岡正剛,エバレット・ブラウン、PARCO出版)
屋久島の杉のまわりに何百年の時間とともに「群体」として育まれる小さな生命の様子は、お店のまわりに張り巡らされる「関係性」と重なり、ずっと自分中にイメージが残っている本です。
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宇宙樹はつねに私たちの身のまわりに現在している。春になるとあたりまえに花が咲くのも、植物という形をかりた宇宙的な知性のあらわれだ。人間と植物がともに花開くための新たな文明の尺度を提起する。
人類学、比較文明論の専門である著者が、二十代の頃のフィールドワークを題材に「人間と植物が共生していくための新たな文明の尺度」を、本書を通して提起している。
人間と樹木(植物)の関係を、現代的な視点から捉えなおし、いま私たちの間に芽生えつつある「エコ」や「スロー」という言葉で表現されている新たな意識とはどのようなものなのか、どこへ向かっているのかを明らかにしていく。
序 「花見」の原風景
第1章 色彩の時間論
第2章 宇宙的器官としての樹木
第3章 「工」の思想/森の思想
第4章 パートナーの木
第5章 人間と植物の共進化にむけて
終章 現在する宇宙樹
『宇宙樹』
著:竹村真一
発行:慶應義塾大学出版会
A5変型
200p
初版2004年6月15日